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不正咬合の治療方法:不正咬合の種類:下顎前突
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不正咬合の治療方法
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上下顎前突
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開咬
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萌出遅延・埋伏
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顔面非対称
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包括(全顎)的治療vs限局(部分)的治療
下顎前突 (かがくぜんとつ)
いわゆる”うけ口”と云われる歯並びです。反対咬合とも云います。
下顎の前歯が上顎の前歯より前に出ているために、うまく噛めないだけで
なく、発音にも影響があります。
下顎の前歯や下顎全体が前方に出ている場合と、
上顎の前歯や顔の中央部(鼻や頬まで)全体が後退している場合が
あります。
また、オトガイが前方へ大きく突き出している(=突出度が大きい)
場合もあります。
乳歯期の前歯だけの反対咬合は、永久歯の前歯が生え変わる際に、
自然に治癒してしまうこともあります。
しかし、遺伝的な要因の大きいケースの乳歯期の反対咬合では、
永久歯の前歯が生え変わっても状態は変わらないことが多いのです。
そこで、この時期に一度、矯正専門医を受診して、
すぐに治療を必要とするのか否かを診てもらって、
長期的な管理をされることが望ましいのです。
治療の必要があると判断された場合には、
第一期治療として前歯や臼歯の被蓋関係の改善などを行ないます。
前歯部叢生を伴う前歯部反対咬合(第一期治療)
舌側傾斜して萌出した永久歯の前歯(永久中切歯)が
1本だけ反対に噛んでいる(1歯反対咬合)のを
早期に改善して、引き続いて上下顎の前歯を排列した症例です
初診時
治療終了時
詳しい治療経過をご覧になられる場合は画像をクリックして下さい。
上顎(両側中切歯)翼状捻転と正中離開を伴う前歯部反対咬合
(第一期治療)
上顎両側中切歯翼状捻転と正中離開を伴う前歯部反対咬合を、
上顎にリンガルアーチとセクショナルアーチを用いて改善した症例です
初診時〜治療中〜治療終了時(上段から下段へ)
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前歯部反対咬合(第一期治療)
前歯部(右側中切歯と側切歯)反対咬合を、
リンガルアーチとセクショナルアーチを用いて改善した症例です
初診時
治療終了時
治療終了後2年4か月
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前歯部反対咬合(切端位採得可)(第一期治療)
切端位(上下の前歯がつき合せの位置)が採得可能な前歯部反対咬合
でしたので、上下顎のセクショナルアーチで被蓋の改善だけを行い、
その後、経過観察中も、咬合は安定しており、空隙は自然に閉鎖した
症例です
初診時
治療終了時
治療終了後2年
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ところで、従来、広く行われてきた、チンキャップ(Chin cap)による
下顎骨の成長抑制(+下顎前歯の舌側傾斜)や、上顎前方牽引装置に
よる鼻上顎複合体の前方成長(+下顎骨の成長抑制)は、
長時間の装着が必要であり、患者さんの協力にのみ頼った治療法である
ことや、その後の下顎の追いつき成長(catch-up growth)が生じる
こと、顎関節への影響が懸念されることなどから次第に使用頻度は減少
しており、昨今では、(下顎を後下方に回転させて)前歯の被蓋を改善
しやすくする目的で、一時的に使用することがあるくらいではないかと
思われます。
下顎の思春期成長がほぼ完了して、永久歯も第二大臼歯まですべて生え
揃ってからは、下顎の前から四番目の歯(第一小臼歯)を抜いて治療
することが多いのですが、下顎の前から四番目の歯(第一小臼歯)と
上顎の前から五番目(第二小臼歯)あるいは四番目の歯(第一小臼歯)
を抜いて治療すること(定型抜歯)もあります。さらに、抜く部位が
大臼歯だったり、前歯であること(非定型抜歯)もありえます。
また、歯を抜かずに治療(非抜歯治療)することもあります。
上顎叢生を伴う下顎前突(抜歯治療)
骨格性の要因は比較的小さい下顎前突で、上顎の叢生がやや大きかった
ので、上下顎とも左右の小臼歯を1本抜歯して咬合と口もと・側貌を
改善した症例です
初診時
治療終了時
初診時(左)と治療終了時(右)の側貌
下口唇の突出感が改善されて、良好な口もとが獲得されています。
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なお、
矯正歯科治療における偶発症としては、歯肉退縮、歯根吸収、
齲蝕のリスクなどが挙げられます。→
一般的なリスク・副作用
昨今では、歯科矯正用アンカーを用いた治療で、歯を後方へ移動させる
ことも可能なケースもあります。
しかし、下顎自体が大きく前方に位置している、 あるいは上顎が後退
している場合には、下顎の歯を抜いて、咬合だけを作り上げても、
つまり骨格の不正をカムフラージュするだけでは、好ましい側貌を得る
ことは難しいことが多いのです。
上下顎叢生を伴う骨格性下顎前突(抜歯治療)
骨格性の要因の大きい下顎前突ですが、顎矯正手術を希望されなかった
ため、”カモフラージュ”治療を行った症例です
初診時
治療終了時
初診時(左)と治療終了時(右)の側貌
矯正治療(抜歯治療)だけでは、下顔面の突出感は改善されません。
詳しい治療経過をご覧になられる場合は画像↑をクリックして下さい。
すなわち、咬合だけでなく、顔貌の改善をも視野に入れた治療ゴールを
目指した治療法(
顎矯正手術:下顎骨後方移動術や上顎骨前方移動術
など)を考慮すべきなのです。
骨格性下顎前突(上下顎移動術)
上下顎軽度叢生を伴う骨格性下顎前突に対して、非抜歯での術前矯正治療
の後、Le Fort T型骨切り術(LF-T : Le Fort T osteotomy)による
上顎骨前方移動術と下顎枝垂直骨切り術(IVRO : Intraoral vertical
ramus osteotomy)による下顎骨後方移動術の組み合わせによる上下顎
移動術を施行した症例です
初診時
顎矯正手術直前
治療終了時
初診時(左)と顎矯正手術直前(中)と治療終了時(右)の側貌
治療終了時には下顎全体が後退しています
詳しい治療経過をご覧になられる場合はここをクリックして下さい。
なお、顎変形症の治療に伴う主たる偶発症・合併症としては、
出血、知覚異常、後戻り、顎関節症、Progressive Condylar Resorption、
心理的不適応、閉塞型睡眠呼吸障害などが挙げられています。
そのため、治療開始前に起こりうる偶発症・合併症に関する十分な説明を
行って、インフォームドコンセントを得た上で治療を開始すべきであると
されています。
…日本口腔外科学会による顎変形症診療ガイドライン(2008年)
顎矯正手術を併用した治療の詳細については、
顎変形症 ならびに
顎変形症に関する研究業績 をご覧下さい
さらに、オトガイが前方へ大きく突き出している(=前方への突出度が
大きい)場合や、上下的に長い場合など、逆に、オトガイが後退している
(=前方への突出度が小さい)場合や、上下的に短い場合など、それ以外
にも、オトガイが側方にずれている場合などは、オトガイ形成術も診断の
際に併せて考慮すべきかもしれません。
なお、
オトガイ形成術後には、下記のごとく様々な
合併症が生じることが
報告されています。
…創の離開、感染、血腫、知覚神経麻痺、歯の偏位、歯根の損傷、
歯肉の牽引による歯根の露出、過剰な軟部組織や
mentalis muscle縫着の失敗によるsoft-tissue chin ptosis、
非対称やstep-type deformitiesなどの輪郭不整などが挙げられ
ます
顎変形症患者に対して施行したオトガイ形成術後の輪郭不整について
鶴田仁史, 宮本純平, 宮本義洋, 宮本博子
日本美容外科学会会報 第39巻, 第 3号,
8-20. 2017(平成29年)
オトガイ突出度の大小
左から、オトガイの突出度が大きい、やや大きい、標準的な例
オトガイ形成術(水平骨切り術によるオトガイの前方移動)
左は術中写真(プレートを用いて固定)
右は治療後の側方頭部X線規格写真
種々の不正咬合の治療例はこちらからもご覧いただけます
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